高価なニットやお気に入りのニットなど、大切にしている1枚を皆さんはどのようにお手入れしていますか?洋服の中でもニットは、縮んでしまうなどのトラブルが多く扱いが難しいとお考えの方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、どうしてニットは洗濯や乾燥機で縮んでしまうのかを解説します。そして、縮まないニットの洗い方やクリーニングについても紹介していきます。
1.ニットは洗濯するとなぜ縮むの
ニットが縮む原因は、「素材」と「洗濯方法」が関係しています。まず、ニットの素材ごとに縮む要因を見ていきましょう。
1-1.植物性天然繊維のニット
植物性天然繊維のニットというと、綿製や麻製のものがあります。植物性天然繊維は、水を吸収すると膨張して、内側に戻ろうとする力が働きます。上下左右にゆったりゆとりをもたせるループ状に編まれるので、内側に戻ろうとする力が働いたときに縮むのです。
1-2.動物性天然繊維のニット
動物性天然繊維は、ウールやカシミヤ、シルク製のものが多く販売されています。動物性天然繊維の繊維表面は、人毛のようなうろこ状の「スケール」になっています。このスケールは乾燥時には閉じていますが、濡れると開く性質があります。濡れた状態で繊維同士が擦れると、開いたスケールが絡まってしまう「フェルト化」が起こります。このとき、ニットの状態としては、縮んでしまっているのです。
1-3.化学繊維のニット
ポリエステルやアクリルなどの化学繊維のニットは、なめらかな手触りが魅力です。ただし、熱に弱いのが弱点です。乾燥機やアイロンをかけると、縮んでしまいます。
2.ニットの縮まない洗い方のコツ
ニットが縮む原因は「素材」と「洗濯方法」にあることがわかりました。それでは縮まないように洗うには、どのようにしたらいいのでしょうか。
2-1.「洗濯表示」を確認する
まずはニット内側のタグに明記されている「洗濯表示」をチェックしましょう。水が入った桶に×(バツ)印が描かれた「水洗い不可」マークがあるものは、自宅での水洗いはできません。桶に手の絵が描かれたマークや、桶の水や洗濯機を表す四角形の中に数字が書かれたマークは、家庭での洗濯が可能です。
ただし洗濯できる場合も、十分気をつけて洗わないと縮みの原因になってしますので、気をつけましょう。縮んでしまう以外にも、風合いが損なわれる、毛玉ができる、型崩れするなど、ニットは正しく洗わないとトラブルが起こりやすい繊細なものなのです。
2-2.おしゃれ着用洗剤を使う
自宅で洗濯をする場合、洗剤は「おしゃれ着用洗剤」がオススメです。おしゃれ着用洗剤は、中性洗剤です。洗浄力が弱い分、生地には優しく、縮み防止のシリコンなどが含まれているからです。
2-3.洗濯機を使うなら「手洗いコース」で
おしゃれ着用洗剤を水に入れた洗濯液の中にニットを浸し、手洗いします。擦ったりもんだりせずに、優しく押し洗いするのがコツです。洗濯機を使えるニットの場合は、「手洗いコース」を選択しましょう。
2-4.洗濯ネットに入れる
ほかの洗濯物との摩擦や絡まりを防ぐために使う「洗濯ネット」に、きれいにたたんだニットを入れて洗いましょう。型崩れを防ぐ効果があります。
2-5.日陰で平干しする
洗い上がったニットは、直射日光によって生地が傷むのを防ぐために日陰で平らにして干しましょう。ハンガーなどに吊して干すと、伸びたり型崩れしたりの原因になります。
3.クリーニング店ではどのようにニットを洗うのか
「水洗い不可」など、自宅で洗濯できないニットは、クリーニング店に出したらどのように洗濯されているのでしょうか。
3-1.検品
まずは汚れの有無や素材の確認などを検品し、洗い方の方針を決定します。
3-2.ドライクリーニング
ニットの天敵ともいえる水をまったく使わず、有機溶剤で洗うのが「ドライクリーニング」です。水を使わないので、型崩れしやすいコートやニットに最適なのです。
有機溶剤は石油や塩素などを原材料にしていて、汚れを溶かして落とす洗剤です。油溶性の汚れに馴染んで落とす効果があります。水溶性の汚れは、大気中の湿気などのわずかな水分を利用して、界面活性剤の働きで洗浄する「ドライソープ」で処理します。
3-3.仕上げ
専用のスチームやアイロンで形を整えます。毛玉があったら丁寧にカットします。
3-4.最終チェック
汚れが落ちたかどうかなどの最終チェックをした後、引き渡しになります。
4.クリーニングに出したほうがいいニットとは
ニットの自宅での洗い方と、クリーニング店での洗い方について解説してきました。それでは、クリーニングに出した方がいいニットとはどのようなニットなのでしょうか。
4-1.洗濯表示をチェック
洗濯機や手洗いで洗濯できるマークが洗濯表示にあれば、ホームクリーニングが可能です。デリケートな素材のニットには、〇印の中に「F」や「P」の文字が書かれたマークが書かれていることが多いのです。これは、クリーニングのときに参考にするものです。このマークがあったら、クリーニングに出しましょう。
4-2.装飾のついたニット
スパンコールや刺繍などの装飾がついたニットは、間違った洗濯方法で洗うと、変色したり型がくずれたりしてしまう恐れがあります。
4-3.毛足が長いニット、ふんわりしたニット
毛足が長いニットは絡まりやすく、取り扱いが難しいのです。ふわふわした手触りが魅力のニットも、風合いを損なわないためには、クリーニングに出したほうがベターです。
4-4.デリケートなニット
アンゴラやカシミヤ、ウールなどの高級獣毛のニットは、非常にデリケートです。大切な1枚なら、迷わずクリーニングに出しましょう。とくに動物性天然繊維のニットは虫食いの被害にもあいやすいのですが、クリーニング店に出せば、防虫加工もしてもらえるのでオススメです。
4-5.大切なニットなら迷わずクリーニングへ
ホームクリーニングができると洗濯表示には表示されていても、やはり風合いを損なわずに自宅で洗うのは難しいものです。大切にしている1枚なら、洗濯表示に関わらず迷わずにクリーニングに出しましょう。
5.まとめ
ニットは型崩れや縮みなどが起こりやすく、ベストな状態で着続けるのは難しい衣類のひとつです。それでも大切な1枚は、長く愛用したいものです。正しい方法でホームクリーニングしたり、積極的にクリーニング店を利用したりしましょう。
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